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友人であり、起業家である杉本宏之君の
本がとても売れているようです。

当社の社員が読んで面白いと投稿して
いるのも何度も見かけました。
私も帯で推薦させてもらいましたが、
実際この本、面白いです。

倒産に向かうまでの凋落を描いた
起業家のノンフィクションですが、
例えて言うなら日本が敗戦に向かう
過程を描いた「永遠のゼロ」のような
面白さでしょうか。

杉本君の孤独と苦悩を感じながら
読み進めるに従って、私も胃が
きりきりしたり、思わず涙ぐんだ
場面もありました。

私の印象に強く残ったのは132p、
株主の女性からの手紙です。

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私は60歳を過ぎた年金生活者です。
一昨年、お父さんが退職した時の
お金でエスグラント株を購入しました。
昨今の経済情勢で株は下がり続け、
700万円の簿価がついに100万円
をきりました。
私は何度も売ろうとしたけれど、
あなたの顔を見ているとなかなか
売れなくて結局ここまで来てしまい
ました。
とにかく辛い時も前を向いて
頑張ってください。


この後倒産した訳ですから、
どれほど大切なお金か想像に容易い
この女性の退職金は、ゼロになって
しまった可能性が高いです。

上場するということはどういう
ことなのか、
人を雇用することとはどういう
ことなのか、
経営者がおかれている立場は
このエピソードに凝縮されている
と思います。

この洒落にならない現実と、
絶えず対峙していれば、誰でも
気がおかしくなってしまいます。

でも、自分が背負っているものを、
頭の片隅に感じていれば、経営者は
カッコなんてつけている場合ではない
ということに気づくはずです。

杉本君は「踊るしかないパーティー」
に参加してしまったと
振り返ってますが、95pで、
ゴールドクレスト安川社長は業界
全体が不動産好況に乗り遅れるな
という風潮の中、新たな仕入れを
手控えたエピソードが出てきます。

株主の資産を守るため、
社員の生活を守るため、
目の前の損得や誘惑や自尊心を
超越してシビアな現実を直視
できていたならば、最悪の事態は
回避できたのかも知れません。

筆舌に尽くしがたい悪夢のような
日々を経験をしていた当時、
彼は銀行を憎んでいました。

「本でも書いて銀行に復讐したら?」
と私がその頃冗談で勧めたのですが、
この本のあとがきでは、
「彼らも自分の使命を果たすため
必死に働いてただけ。”ノーサイド”」
と書いていました。

誰かに憎しみや恨みをぶつけても、
因果応報自分に帰ってくるだけです。

また、会社の失敗した原因は
リーマンショックのせいでもなく、
銀行のせいでもなく、
全部自分にあると書いています。

現在、杉本君は苦しい時期を乗り越え
また大復活を遂げています。

この本を読めば、復活できるひとと
そうでない人の違いにも気づくことが
できるかも知れません。




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