2023年3月18日、サイバーエージェントは創業25周年を迎えました。

本当にたくさんの人に支えられてここまできました。お世話になっている皆様、応援してくれている皆様、関係者の皆様、心より感謝しています。いつもありがとうございます。

 

私個人では、今年50歳なのでちょうど人生の半分をサイバーエージェントの社長として過ごしてきたことになります。

 

生まれてから18歳までを過ごした福井県の田舎町の狭い社宅の部屋の片隅で、カセットテープを入れたウォークマンを耳に当て、いつも爆音で音楽を聴いていました。

民放が2局しか映らない福井県ではプロ野球は巨人戦しか放送していないため、県民の多くが巨人ファンで、それに反発するように阪神を応援していました。

テレビで映画が放送されればビデオテープに録画し、汚い画質で何回も見返していました。

テレビ越しに映る華やかな世界と、自分の置かれた環境とのギャップを強く意識し、深夜のラジオの向こうからは都会の人々の息吹を感じていました。

小学生の時に発売されたファミコンを親から買ってもらい、どのソフトよりもハマったのは「2人打ち麻雀」でした。

自転車を漕いで図書館に行き、3冊借りて3冊返すのが、小学校から高校までずっと私の習慣でした。

漫画は図書館には置いてないからお小遣いで買って、ボロボロになるまで繰り返し読んでいました。

 

あの頃からいまを思えば、まさしく隔世の感があります。

 

家、会社、車、あらゆる生活スペースにはBluetoothスピーカーを配備し、いつでも手元のスマホの「AWA」で好きな時に好きな曲を再生して聴いています。自社のサービスながら完全に生活必需品です。

テレビ朝日と共同で立ち上げた「ABEMA」は現在27チャンネル。これもマルチデバイスで、テレビでもスマホでもタブレットでもPCでも場所を選ばず見ることが出来ます。タイムシフトや追っかけ再生でいつ見ようが時間も自由で本当に快適です。

自分で考案しABEMAで放送している「Mリーグ」に自ら熱狂し手に汗を握って観戦し、麻雀だけでなくHIPHOPに将棋に格闘技に大相撲にMLBに欧州サッカーに、そしてニュースにドラマにバラエティ、遂には昨年末、世界最高峰のコンテンツ、サッカーW杯まで放送し、自分の好きなコンテンツを自ら立ち上げたサービスで楽しむ毎日です。

もちろん自社のものだけでなく、NetflixにAmazonプライムにU-NEXTに、あらゆるオンデマンドサービスを駆使して映画やドラマを楽しんでいます。私は報知映画賞の審査員を10年以上やっていることもあり、毎年映画を100本以上観ているのです。

本と漫画は主にKindleで相変わらずたくさん読んでいて、雑誌はdマガジンで、本屋やコンビニまで行かなくても手元のタブレット端末で読み放題になりました。全てがオンライン化したため家に大量にあった物理的な紙の本や雑誌、パッケージのCDやDVDやゲームソフトはすっかり姿を消して家の中はスッキリしています。

 

とはいえオフラインでも映画館には習慣的に通い、演劇、音楽ライブ、スポーツ観戦は出来るだけ現地に行くし、週末は自分たちのサッカークラブ「町田ゼルビア」の試合を観にスタジアムへ、個人的な所有馬の出走を観に競馬場へと足繁く通っています。サッカークラブと競走馬のオーナーをやってるのは、ゲームの「サカつく」と「ダビスタ」をリアルにやっているようだと人から羨ましがられています。

 

昔を思えばもう、何もかも全てが夢のようです。

 

私がコンテンツを凄く沢山見てるので、何故サイバーエージェントの社長をしながらそんな時間があるんだと不思議がられることがありますが、そもそも仕事の処理速度が早いし、私のスタッフは優秀だし、手元のメッセやLINEや添付資料で24時間365日バンバン仕事が進んでいくので働き方も昔とは随分変わっています。

創業25年経っても変わらず時代の最先端にいる感覚はあるし、元々かなり好きだったエンタメやコンテンツはいつの間にかそのまま自分の仕事になりました。社内はしがらみもなく自由で、会社の仲間は気分がいいやつばかりで、25年やってもサイバーエージェントの社長という仕事には充実感しかありません。

 

そんな最中ですが、3年後、2026年にサイバーエージェントの新社長を内部から昇格させ、私は会長になることを決めました。

 

きっかけは11年後をイメージした「藤田晋(60)」と書かれた中長期の社内資料を目にしたときでした。50歳の社長はこの規模の会社としてはまだ若いとは思うけど、10年なんてあっという間に経つので、今から準備しないとサクセッション(継承)出来ないと思ったからです。

実際社長をやればやるほど、どんどんこの仕事が引継ぎ困難になっていくことを実感し、ずっと危機感を持っていました。

最近は60歳という年齢でもみんな全然若いのですが、サイバーエージェントは20代や30代の若いうちから活躍できることが組織の活力の源泉になっています。だからこそ象徴的な社長がずっと変わらないことを避けたいのです。

また、大学生の時に「ビジョナリーカンパニー」を読んで感銘を受け、最初から誰がやっても繁栄していくパブリックカンパニーを創る志でやってきたという自負もあり、それを証明したい気持ちもあります。

 

新社長が就任した後については、その先しばらくは私が会長兼CEOとして伴走し、うまくサクセッションが成功すればどこかのタイミングで身を引くつもりです。どうしても難しければ会長兼CEOとして引き継ぎ可能な会社になるまで、ずっと何年でも仕事を続けるつもりでいます。無責任な引き継ぎをするつもりはないので、心配な関係者の皆様はご安心くださいませ。

 

実際、どれだけの難易度かは自分が一番判ってるつもりだし、ここでつまずく創業社長がとても多いのも重々に承知しています。

あと3年、AbemaTVをしっかりとやり遂げ、そして自分の最後の大仕事として、私の代よりもっとずっと会社が成長していくようなサクセッションを万全の準備と体制で遂行し、必ずや成功させて見せます。